それでも君を

ニコッと笑顔を添えてそんなことを言う水沢先生をみて、これは敵わないなと直感的に思う。



颯くんが“上手くやれる”と言っていたのは、水沢先生にこのような過去があったからなのだろう。



「お熱を測るのはできそうですか?」



急に始まった先生の話は急に終わりを迎えたらしい。



この場のペースを握っているのは完全に水沢先生だ。



笑顔で体温計を差し出す先生から黙ってそれを受け取り、脇に挟む。



この人は患者と医者、両方の立場から考えて私に体温計を渡してきているのだと思うと、これ以上嫌だとは言えなかった。



その様子を見て、嬉しいです、と素直な感想を口にする水沢先生。



いや、これはちょっと、なかなか手強い…