それでも君を

微笑みを添えて、水沢先生が私の質問に答える。


「そうですね。立川さんは嫌がっていましたが、あれを先伸ばしにしても辛いのは立川さんです。
患者さんに寄り添うだけでなく、命を救いたいのなら心を鬼にしなくてはならない時もあるのだと医者になって初めて知りました」




そっか…



医者になるとそんな風に思ったりするんだ…




「私も…」



ん?と水沢先生が不思議そうな顔をこちらに向ける。



「私も医者になったら分かるのかな?颯くんや水沢先生の気持ち、、」



意外な感想だったのだろう。



驚いた表情でこちらを見つめていた水沢先生だったが、一呼吸置いて柔らかに返答を始めた。



「ドクターになりたいのなら応援しますけど、今はこちらの気持ちまで考えなくていいです。治すことが先決です。僕たちの気持ちを思いやる優しさは、僕の診察を受け入れる勇気に変えてみましょうか」