それでも君を

「どうぞ」



ベッドサイドに椅子を寄せ腰掛けると、水沢先生は柔らかな口調で話し始めた。



「実は僕も小さい頃、病気でよく入院していたんです。嫌なことや痛いことをたくさん経験しました」



えっ、、


私の反応を察知して水沢先生が慌てて言葉を付け足す。



「あっ、今はもう手術も受けて完治してるのでそんな顔をしないで下さい。お陰さまで、年1回の検診のみで元気に過ごしています」



そうなんだ…



「だから診察や治療を嫌だと思う気持ちが他のドクターより分かるのかもしれません。自分も不安な気持ちや辛い気持ち、心細い気持ちをたくさん抱えてましたから。それが分かるからこそ、出来る限り患者さんの気持ちに寄り添ってあげたいと思っています」



そう、なんだよね。



不安だし、怖いんだよ。



水沢先生の言葉に黙って頷く。



「だけど、医者になって、患者さんが嫌がってもやらなければならない時もあるということも理解しました。
昨日立川さんにした点滴もそうです」



「昨日のも?やらないとダメだったの?」