言われた通りに腰掛けると、颯くんも椅子に座ったままぐいっと近づいてきて、急に二人の間の距離が詰まった。



顔をあげると想像以上に近いところに颯くんの顔があって、少しビックリする。



「前にも言った通り、あのお薬は大事なんだ。だからどんなに嫌でも飲んでほしい。じゃないと、梨央の病気がどんどん進行しちゃう。」



声は優しく、怒ってないことが伝わる。



「飲んだ上で最大限の感染予防もしてほしい。お願いばかりで悪いけど。」



やっぱり現状維持なのか。



颯くんが真剣に話してくれているのが伝わるから、これはどうにもならないのだろう。



「それでもなんのためって聞かれたら、、」



「なんのため?」



俯き加減のまま小さな声で質問を投げ掛ける。



「梨央が今以上に辛い思いしないためだよ。色んな症状が出る病気だから、今後どうなるかは俺にも予想がつかない。だけど、透析しないといけなくなったり、輸血しないといけなくなったりするのは梨央も嫌だろ?」



私、そんな風になっちゃうかもしれないんだ…。