Last Message~君とみた世界~

──────ガラ。


スライド式のドアを開けて中に入る。


入ってすぐに見えたのは、色んな機械に繋がれているおれの母さん。


いつもでは考えられない弱々しい姿に、嫌でも現実を見せられているようだ。


「かあ、さ・・・。」


声を出そうとしても、出し方を忘れたかのように上手く出せない。

足がその場に張り付いたように動かない。

今すぐにでも駆け寄りたいのに。


......
残された時間、なるべく傍にいたいのに。



頭が追いつかない。心が受け入れようとしない。






──────嫌だ!!


咄嗟にそう思い、回れ右をして病室を飛び出した



・・・認めたくない。受け入れたくない。理解したくない。



階段を駆け上がり屋上に出た


「・・・んで・・・・・・なんで母さんなんだよ!なんでおれたちなんだよ!!おれたちが何をしたって言うんだ!」


堪えてた言葉が涙と共に流れ出て空にこだまする。



「誰か!誰でもいいから、嘘だって言ってくれ。・・・っうそだ・・・っていっ・・・てくれよ・・・。」


フェンスにすがるようにズルズルとしゃがむ


先程の医者との会話が鮮明に思い出された









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『先ほど、お父様の方には説明しましたが、改めてご説明します。瀬戸内夏子さんですか・・・脳腫瘍です。』



医者のその一言で一気に崖から突き落とされたような衝撃を感じた


『通常ですと、ここまで大きくなって見つかることはほとんどないんです。これほどまでになると、本人も自覚症状がなかったはずがないのですが・・・恐らく相当無理をされていたのでしょう。・・・残念ですが、我々にできるのは、少しでも痛みを緩和する治療しか・・・。』



・・・分かっている。おれだって馬鹿じゃない。この医師の言葉に続く言葉くらい容易に想像できる。でも・・・それはおれたちが1番聞きたくない言葉・・・。



『あえて包まずに言うと、・・・余命宣告、ということになります。』


『長くて1ヶ月。最悪1週間です。』


抑揚のない、機械のような医師の声に再び絶望を感じる



『今後の治療についてですが、・・・・・・』



そんな医者の声なんて何も聞こえなかった。



さっきから頭の中をぐるぐると回る“脳腫瘍 ”と“1ヶ月から1週間 ”の文字。


何も聞きたくない。信じたくない。・・・そうだ。母さんの姿を見れば、元気だってわかるはずだ。



ガタッ。


椅子から立ち、さっき聞いた番号の病室を目指した



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