―懐かしい夢を見た。

覚醒しきっていない頭でそんなことを思いながらのろのろとベッドから起き上がる。

顔を洗おうとすると鏡の中の無気力な眼差しの僕と目が合う。
今でも彼女、彩夏は『光』が僕にぴったりの名前だと言ってくれるだろうか。

そんなくだらない思いも泡とともに流すとピンポンというチャイムの音と同時に

「光ー」
と僕の名前を呼ぶ彩夏の声が聞こえた。

毎朝迎えに来なくていいと言っているのに彩夏は毎日迎えに来る。

不思議に思って理由を聞いたら

「私が迎えにこないと光はひとりぼっちになっちゃうでしょ?」
そう言って笑ってたっけ

そんなことをぼんやりと考えてると


女の子を待たせないのと母さんがため息混じりに言ってきたから僕は慌ててカバンを掴むと行ってきますと玄関の扉を開けた―。