「優ママおはよ!」

「おはよう琉南ちゃん。毎日ごめんねぇ、」

「もう慣れたからw」

気にしないで!と気を遣う優ママにそう告げ、階段をダダっと駆け上がる。
扉をガチャ、と開けて、

「こら!!優起きろーー!」

と、この幼馴染みを起こすのが、私の日課だ。

「んんー.....るなぁ...?あともーちょい...」

「もーちょいはない!!ほら遅刻するよ!?」

うぅ〜と唸る優の布団を剥がして、体を起こす。

「優ママ朝ごはん作って待ってるよ?」

「ん.....るなつれてって...」

「はあ?もー...しょーがないなあ」

どう見てもまだ寝ぼけてる優の手をぎゅっと握り、階段を慎重に下りる。

「あ、優!早く朝ごはん食べちゃって!もー高校生なんだから朝くらい1人で起きなさい!」

朝ごはんの準備をしていた優ママ。
置かれた机の上の料理からは、とてもいい匂いがする。

「やって、琉南起こしにきてくれるんやもん...」

「もう、琉南ちゃんに甘えないの!!」

優ママは、そう優に怒ったけれど、私は案外この朝が好きだ。
優を起こすのは私の役目。
そのことに、苦なんて感じたことは一度もない。

「琉南!」

「ん?どしたの」

「はい、あーん!」

「んっ.....」

勢いよく口に詰め込まれた玉子焼き。
ほんのり甘くて、美味しい。

「母さん特製の!琉南好きやろ?」

「...ふふ、うん。美味しい!」

...ほら、全然面倒臭いとか、思わない。
だって、この笑顔が朝から見れるんだもん。
私にとっては、得しかないよ。

「...あ、二人ともそろそろ時間やばいんじゃない?」

優ママに言われて時計を見てみると、もう家を出ないと学校に遅刻してしまいそう。

「優いくよ!」

「まってえや!...ん、ごちそうさまっ!!」

2人してドタバタと家を出て、慌てて走る。

「琉南はやく!!」

「ちょっ、優はやいっ!」

足の速い優は、すぐさま私のすぐ前を行ってしまう。

「もーほら!」

そう、何事もなく差し出された手。
...いつも、困った時に、差し出してくれる手。

「...うん!」

私は、迷わずその手を握った。