「……そうね」

苦悩する王の姿を長い間見て来た彼女達にとって、優しく穏やかな時の流れは、悲願の成就された証でもある。

おそらく元気であちこちを見て回っているだろう旅路の途中にいる主に心悩ますよりも、こうして側にいる主の方に心をこめてお仕えしなければ。

同じ造作の顔を見合わせ、心をひとつにした彼女達は顔が見合わせて大きくうなずくと、それを見計らっていたかのように、落ち着いた精霊王の声が響いた。

「……よい風だ」

宝石のように輝く鮮やかな翠の瞳を青く澄み渡った空に向け、王はつぶやく。

「きっと今頃……あやつも、この空を眺めていることであろう」

あの日……双子の王と呼ばれた今代の精霊王の1人が森を離れた時から、王は片割れの動向を探ることを止めた。

その代わりのように、こうして空を眺める。

空の色、雲の流れを見て、風を感じ、王はもう一人の王に思いを馳せているのだろうか?

しばらくそうした後で、王は満足そうに目を細め、近くの木々や草花に触れてささやくのだ。

「我が半身、この森の守護者たる精霊王の片割れよ。今日も我らの森は穏やかだ……そなたの方は、どうだ?」