あれから、何百何千の朝を迎え、いくつもの季節を過ごしたけれど。

彼女達……精霊王の泉の精達の心は、今も変わらず主と共に在る。
そうは言えども、とんと姿の見えない主を想う心は止められないもので。

「今頃どうしているのかしら……?」

1人が、ほう、とため息と共につぶやけば。

「……便りがないのは元気な証拠と申しますわ」

もう一人が諭すように言う。

「だいじょうぶ」

最後のひとりがそう言えば、2人は揃って顔を上げる。

「王さま、わらってる。だから、だいじょうぶ」

そう言われて振り向けば、彼らが仕える双子の王の1人……いや、今はただ一人、この森を護る精霊王が空を仰ぎ、両の目を閉じたまま、ほのかな微笑みをその唇に浮かべていた。

双子の片割れから力のほとんどを譲り受けた王の姿は、以前より一回り以上大きくなり、人の子の若き男性体を形作っていた頃よりほっそりとしてはいるものの、以前とは比べ物にならぬほどに力強い、輝かんばかりの力に満ちていた。

その後ろ姿の穏やかさを見て、ため息をついた泉の精は物思いに下がっていた眉をふっとゆるめ、慈愛に満ちた母にもにた表情で微笑む。