「待て、そなた……っ」

いち早く事態に気づいた青年の王が手を伸ばすと、小さな王の作り出した繭のような力の奔流が、バチッと小さな雷のような音を立てて、その指先をはじいた。

「お返し、だ。そこで黙って見ていろ」
「っ!!」

なすすべなく見つめる彼らの中心で、肉持たぬ王を構成している力の一部が少しずつ剥がされ、その姿を変えていくのが感じられる。

「王よ……」

かけられた声は、どちらの王にだったか……

息をつめて見守る眷属達の前で、その力の渦は次第に力を弱め、ふいに泡がはじけるように霧散する。

そして、そこには、まるで服を脱ぐかのように変わってしまった小さな王がいた。


姿形はほとんど同じ。

けれど、身の内からあふれ出ていた王たる力は消え、まるで人の子のよう。


先ほどまで身にまとっていた、神々しい精霊の力は小さな珠な形に凝縮されて、小さな手の平の上に浮かんでいる。

「ほう」

その様子に感心したような声をもらした青年の王は、むしろ楽しそうに小さな王の近くへ歩み寄った。

「……ずいぶんとかわいらしい姿だな」
「王の力を手にしたまま長くここを離れるのは、ちと影響が大きすぎる。こうしておいた方がいいだろう」