口ごもったのを見て、最後の1人が口を開く。

「王さまは、こわがってる」
「こわい?何がだ?」
「もう戻らないかもって思ってる」

それは、しばらく前から、小さな王も薄々は感じていたことだった。

頻繁に王の樹に触れ、様子を窺っているらしい青年の王と違い、小さな王が相手の動向を探ることはほとんどない。

例外は、交換を始めた一度目の目覚めの時。

片割れがどうしていたか、と問うた時に、周りに言われて、思わず見てしまったのだ。

目覚めてすぐに、自分の様子を辿る片割れ。

それからも、何度も、何度も…

自らの行動の記憶を覗くのは、数え切れないほどの回数で。

ちらりと窺うだけではなく、まるで飢えた動物のように、自分の全てを窺いしろうとしていた。

その様子に、息苦しさを覚えた。

しかし、それよりも嫌だったのは、自分の行動を知った後の片割れの顔。

口数が少なくなり。

あちこち森の中を歩いては、ぼんやりと物思いにふけることが多くなった。

自分のことでショックを受けているらしい片割れの様子は、小さな王にとって面白いものではなく、ただただ不快だった。

そしてまた、そんな風に感じてしまう自分もまた、不快でしかなかった。