「わかってませんよ、何も」
「何もって……私達は繋がっているんだぞ?」
小さな王が言ったのは、片割れの青年の王のことだけではない。
精霊王たる自分は、この王の森と繋がり、世界中の森や木や、草花達と繋がっている。
「私達にわからぬことなど、そうはあるまい」
言い切った王に、冷たい色の瞳を向け、泉の精は言う。
「いいえ、それは違いますわ」
「偉大なる精霊王とて、おわかりではないことも多うございます」
「そうそう。王さま、わかってない」
ぐいぐいと長い私の髪を梳きながら、怒ったような顔をしている泉の精に、小さな王は眉をしかめた。
「私が何をわかっていないと言うのだ、いたっ……おい、世話してくれるのはいいが、おまえたち、力が強すぎるぞ」
「痛くない痛くない」
「王なのですから、大丈夫なはずですわ」
「そうそう」
「うぷっ、おい!」
あたまから勢いよくかけられた水ですすがれて、さすがに堪りかねた王が声を上げると、泉の精は小さな子供に言い含めるようにしっかりとした声色で言った。
「あちらの王は、いつだって貴方様を想っておいでです」



