ユルトと精霊の湖


双子の王達が生まれるより以前から、王の森にいるこの精霊達は、遠慮なく言葉を交わせる数少ない者達。

小さな王が水浴びを好むようになったのはこの泉の精の存在が大きく、今も本当に気分を害しているわけではない。

王として、こうしてじゃれ合いながら話をするというのは褒められたものではないかもしれないが、小さな王は、昔からこういったことが好きだった。

泉の精達もまた、そんな小さな王の性質をわかっていて、王がまだ未熟な頃から、身支度を整え、小言を言い、さながら母親のように世話を焼いて来た。

水にまつわる精霊達は、女性形を取ることが多く、精霊にしては情に厚いものが多い。

ともすれば、人間臭くもある小さな王の仕草や性質は、この者達の影響が大きいのかもしれなかった。

「まったく、お前たちは……いいじゃないか。どうせ……全部わかっているんだから」

小さな王がため息混じりに言えば、泉の精の1人が、手をとめ、大きなため息をつく。