そんな青年の王が去って、しばらく経った頃。
再び泉にやって来た小さな王は、久しぶりに顔を合わせた片割れのことを思い出していた。
「どうして……2人なんだろうな。」
手を止めてつぶやくと、ピュッと鉄砲水のように噴き出した水が顔を濡らした。
「もうっ、またそんなことを!」
ぷりぷりと声を怒らしているのは、この泉の精。
「いつも心配しているのですよ」
「そうそう」
その向かい側でもう1人が同調し、隣にいる者もうんうん、と訳知り顔で頷いている。
濃い青の目に、銀粉を散らしたようにキラキラ光る薄青の髪。
そっくり同じ顔をした三人娘は、この王の森に3つある泉に宿る精霊達。
どこから水が飛んできたのかは確認できていないが、このうちの1人が水をかけたに違いない。
「顔に水とは……おい、おまえたちは仮にも王に向かって」
「王だからです」
「お気持ちを察してくださいませ」
「そうそう」
じろりと睨んだ小さな王に、泉の精霊達は悪びれもせず、口々に言い返す。



