「きゃああっ!」
花精達の小さな悲鳴と同時に、ぼとり、と切り離された肉塊が重い音を立てて地面に落ちた。
「………………え……?」
小さく声を漏らした声を最後に、王の前に跪いていた湖精の姿が一変する。
重い肉の殻から解放され、その切れ目から姿を現した湖精は、羽化した蝶のように美しく生まれ変わった。
白くほっそりとした体は一回り以上も細長く伸び、纏う衣はとろりとした水のごとく。
うっすらと黄味がかっていた肌は、穢れのない雪のような白へ。
背の中ほどまで伸びていた鈍い色の髪は、長さと色、質感さえも変わっている。
小さな滝のようにまっすぐ流れ落ちる、さらりとした銀色。
本来の、水の精霊たる、湖精の姿だった。
「これ……は……っ」
震えながら言った湖精は、すぐに自らの声の違いに気が付いたようだった。
彼女が息を飲んだのは、剥がれた肉が落ちた、その光景を見たせいかもしれないが。



