不安を消し去ることのできない湖精と花精。
そこへ、ふわり、と、気まぐれな風精達がやってきた。
「ねえ、聞いて」
「素敵よ」
「かわいらしいわ」
彼らが運んできたのは、微かに震える人の子のかわいらしい声。
「これは?」
訊ねた花精に、風精は楽し気に答える。
「人の子よ」
「この森に迷いこんだの」
「歌っているの」
笑いながら言う風精の言葉に、湖精と花精は揃って首をかしげた。
迷い込んだ?
あの赤子を取り返しに来たのではないの??
動けない湖精の代わりに、と、身軽な花精はくるり、と一回転して、胸を張った。
「私が見てくるわ」
花精は、ひらひらとピンク色の羽根を羽ばたかせて飛んでいく。
しばらくして、花精が、安心したような、困ったような顔をして戻って来た時。
一緒にいたのは、湖精が思っていたよりもずっと小さな、人間の子供だった。



