「あの子を見つけたのは、去年の今頃だったでしょ?」
「……もう少し、あたたかくなった頃だったと思うけれど」
「そうね……でも、春だったわ。そうでしょ?」
「ええ……それがどうかした?」
湖精が問いかけると、花精は悲しげに肩を落とした。
「あなたが潜っている間……ううん、その前から、みんなで話していたの」
言いにくそうに口をつぐんだ花精は、湖精の顔を見返すと小さな声で言った。
「人の子が、生まれて1年経ってからも目を覚まさないなんてことは……普通、ないそうよ」
「……どういうこと?」
「なにか問題があって、目を覚まさなくても、せいぜい数日か……長くとも数週間……それでも目を開かないなら、その子はずっと……そのままだってこと」
花精の言葉に、湖精は目を見開く。
「そのままって……どういうこと?」
「…………ねえ」
花精は小さな手で湖精の髪をかき分け、冷たい頬に触れた。
「あの子が大きくなっているのは……地と火の精霊様、それに、あなたの力が満ちたあの胎の中にいるから……精霊の力で生かされているのよ……」
花精は、同情に満ちた目で湖精を見つめて言う。



