ユルトと精霊の湖


「出てきたら、あなたに言わなきゃって思っていたのよ……」

珍しく言いよどんだ花精は、湖精の顔色を窺うように仰ぎ見た。

「聞きたくないかもしれないけど、これは本当のことだから……知らないといけないことだって、みんなも言うし」
「なあに?」

首を傾げる湖精に問われ、花精は思い切ったように口を開いた。

「あの……人の子のこと、なんだけど……」
「あの子のこと?」

「そう……あの人の子は……その……まだ目を開かないんでしょ?」
「ええ、でも、髪も爪も伸びてきたし、かなり大きくなったのよ。きっと地の精霊様……と、火の精霊様のおかげね。あなたも、見たらきっと驚くわ」

「そうなの……でも、動かないのでしょ?」

「時々、ぴくんと体を動かすことがあるわ。きっと、もうすぐ目を開くんじゃないかしら」

だから、早く行かなきゃ、と川に向かおうとした湖精をひきとめる花精。

「どうしたの?」

何か言いたそうに、もじもじとしているのを促すと、花精はゆっくりとはばたきながらやって来て、湖精の肩で羽根を休めた。