それから数週間が経ち、湖精の湖はどうにか回復し、落ち着きを取り戻し始めたところで、湖精は再び水面へと姿を現した。
自らを水と同化させ、浄化の作業に集中していたが、状態が安定したので、周囲を確認しようと外へ出て来たのだ。
季節は、春。
周囲の草や木々が、初々しい芽を出し始めているのを見て、湖精はほっと胸を撫で下ろす。
「これで、もう大丈夫ね」
あの川からの温く臭い水は変わらず流れ込んでくるが、あとは少しずつ浄化してやれば問題ないだろう。
赤子の様子を見に行こうとした湖精をめざとく見つけたのは、いつもの花精だった。
「ちょっと!また、ここを離れるつもり?!」
「ええ……あ、でも、すぐに戻ってくるわ。ちょっと様子を見に行くだけよ」
「そんなこと言って、また季節が変わっても戻ってこないつもりじゃないでしょうね?」
「まさか……」
「“また”って言ったのが聞こえなかった?前にそんなことがあったから、言っているのよ」
口をつぐむしかなくなってしまった湖精に、やれやれ、と、花精はため息をついた。



