そうして、赤子を抱き、どれくらいの時間が経ったろうか。
あたたかな空間の外から、湖精を呼ぶ声がした。
胸に抱いた赤子は、いくらか大きくなったものの、まだ目を開く気配はない。
離れたくはなかったが、湖に異変が生じていると言われては、行くしかない、と湖精はしぶしぶ、赤子のための胎がる空間から外へ出た。
使いに来たのは、湖に棲む魚達で、彼らが言うには、湖に“おかしなもの”が流れ込んでいて、体調が悪い、ということだった。
湖へと下っていく途中、火と地の精霊が治める火山の麓をぐるっと回り、向こう側へと続く小さな川から、その“おかしなもの”は流れ込んできているようだった。
「くさい……」
その川の水は、今まで湖精が味わったことのない、嫌な臭いを含んでいた。
「それに、水が熱い……いえ、ぬるいわね」
あの火の精霊の近くで温められた湯は、大きな川となり、湖とは別の方へ流れていた。
これとは違う。
これは……なんだかよくわからないが、良くないものだ。
そう判断した湖精が湖へ戻ると、付近の精霊がすぐに気配を察知し、集まってきた。



