ユルトと精霊の湖


「やいて……?」
「あら、あなたみたいな水精に、そんなこと言ってもわからないわよね」

地の精霊は、朗らかに笑った。

「私達、人のそばで暮らす性質柄なのかしら。どうも人間臭くなってしまうのよ」

そこまで言って、地の精霊は、初めて赤子の存在に気づいたらしい。

「まあ!人間の赤ちゃんじゃない!」

腕を伸ばし、抱かせて、と言うのを拒むわけにもいかず、湖精はしぶしぶ赤子を手渡す。

「かわいいわねぇ、どうしたの?この子」

「私の湖に注ぐ川の途中で、捨てられ、流されて来たのです。体がとても冷えていたので、あたためてみたのですが、乳を飲まず……どこかケガをしているのではないかと……」

「見たところ、どこにもケガはないように思うけれど……まあ、毒や何かの影響で中の方がケガしている場合もあるわね」

「はい……以前、風精にこちらの方で傷を癒す動物達の話を聞いたことを思い出し、やって来たのです」
「ああ、そういうことね」

納得した、と地の精霊は、赤子を湖精に返し、背後で小さくなっていた火の精霊に声をかけた。

「この赤ちゃんの特製ベッドを作るから、そこらへんの水をちょうどいい感じにあたためてちょうだい」