もちろん、私じゃない。
ご飯を食べている最中に、お腹を鳴らす人なんていないでしょ。
じゃあ、もしかして桐ヶ谷くん?
そういえば、桐ヶ谷くんお昼食べたのかな。
いや、別にどうでも良いんだけどさ。
お腹が空いている人の横で私だけ食べるなんて、なんか気分悪いし。
「あ、あの、もしかして今、お腹鳴った?」
起こすなとは言われていたけど、多分まだ起きているよね?
お腹が鳴った瞬間、誤魔化すように寝返り打ったのか少し机揺れたし。
「うるせぇ、話しかけんな」
やっぱり、そうなんだ。
恥ずかしいのか、こちらを見ようとしない桐ヶ谷くん(見られたら怖いけど)。
ちょっと、可愛いかも。
でも、本当にお腹空いているんだ。
このまま無視しても良いけど、なんか食べづらいな。
「お昼、食べないの?」
そう彼の背中に話しかけると、ゆっくりとこっちを見た。
も、もしかして怒らせた!?
「俺が食べようが食べまいが、関係ねぇじゃん。それとも何?お前が俺の飯用意してくれんの?」
はい?
どうしてそういう見解になるの?
いつあなたにご飯を用意すると言いました!?
私はただ心配しただけで、誰もそんなこと言ってないよ!
「まぁ無理だろうな。お前みたいな地味な女が料理上手いわけねぇし」
カチン
流石にそれは聞き捨てならない。
確かに料理はしたことないけど、仲良くない人にそこまで言われる筋合いないんですけど。
いくら相手が学校一のイケメンだからって、これはちょっと黙っていられない。
「私だってやればできるよ!そんなこと言われたくない!」
そう言い返すと、まるで悪魔のようにふっと笑った桐ヶ谷くん。
強気でいこうと思ったけど、やっぱりこの人の表情って怖いかも。
「へぇ、じゃあ作ってくれば?俺が採点してやるよ。ま、どうせ百点中十点くらいだろうけど」
くっ
何なのよ!
そんなに失礼なこと言って楽しいわけ!?
「分かった。絶対後悔させてやるんだから!」
やってやるわよ!お母さんの子だもん!
絶対美味しい料理作って、ギャフンと言わせてやるんだから!

