プツッ




「もしもし。あぁ。はっ、やっぱりお前だったか。あー、うん。分かった。待っている。じゃあな」





電話の相手は分からないけど、何となく想像がついた。
きっと成瀬くんだ。






待っているって、もしかして迎えに来てくれるの?






「光大が開けに来てくれるってよ。たくっ、あいつ来たらただじゃおかねぇ」






闘志に燃える桐ヶ谷くんに、思わず体が震えた。





でも、ちょっと待って。






もうすぐ始まる後夜祭。





きっとあと五分もしない内に成瀬くんが来る。






そうなったら、多分後夜祭に参加するわけで。





後夜祭に参加したら





『私、後夜祭で告白しようと思っているの!』





愛依はきっと桐ヶ谷くんに告白する。






そうなったら、もう本当に自分の気持ちを伝えられない。





だって、後夜祭で告白したカップルは永遠だから。
絶対に別れることはないから。






そんなの嫌だ。
桐ヶ谷くんが愛依の彼氏になるなんて、嫌だよ。







「綾瀬?どうかしたか?」





顔を伏せる私を、桐ヶ谷くんが覗き込んだ。




どうにかしなきゃ。
告白させないように、何とかしなきゃ。