桐ヶ谷くんの匂いだ。



「えへへ、ちょっと大きい」




桐ヶ谷くんに笑いかけると、目を逸らされた。





「ま、まぁ男もんだし、当たり前だろ」





ちょっと顔が赤いのは熱のせい?それとも……。




パン パパン




その時、本校舎の方で大きな音が聞こえた。





この音って





「花火?」






文化祭で花火が上がる理由はただひとつ。
後夜祭が始まるという合図。





え、こ、後夜祭!?





慌てて腕に付けていた時計を確認すると、午後六時をさしていた。





嘘、もうそんな時間?





「結局、お前も文化祭サボっちまったな」





いやいや、笑いごとじゃないよ!午後の交替の時間までに戻るって成瀬くんと約束したのに!






あ、でもさっきの桐ヶ谷くんの推理が正しければ成瀬くんが私達を閉じ込めたわけだから戻らないことは確信していたのか。






じゃあ、受付は誰がやったの?






「何だよ、サボっちまったくらいでそんな落ち込むなよ。ほんと、真面目ちゃんだな」





「うるさいなぁ」






そういうことじゃないよ。





普通の授業ならサボれてラッキーとか思っているよ。
でも、私がやるはずだった受付を誰かにやらせちゃったのかなって思ったら、気が気じゃないんだよ。




プルルル





その時、今度は携帯が鳴った。





私のじゃなくて、桐ヶ谷くんの。






あれ、でも圏外じゃなかったっけ?