ガラガラ
「はぁはぁはぁ」
必死に走って、空き教室に着いた。
ドアを開けると、案の定桐ヶ谷くんは机の山の中で眠っていた。
やっぱり、ここにいた。
「あや、せ?」
ドキッ
不思議そうに見つめる桐ヶ谷くんに、思わず鼓動が高鳴る。
ど、どうしよう。
ちゃんと心の準備してきたはずなのに、桐ヶ谷くんを見た瞬間心臓のドキドキが収まらない。
「まさか、お前もサボり?」
フッと笑いながら、桐ヶ谷くんは立ち上がった。
桐ヶ谷くんのすべての行動や言動にいちいちドキドキする。
「“も”って、桐ヶ谷くんはサボりなの?」
「当たり前だろ。こんな怠いもん参加できるかっつの」
こうやって桐ヶ谷くんと普通に話せていることが、堪らなく嬉しい。
まるで桐ヶ谷くんと出会った頃に戻ったみたいに。
「桐ヶ谷くん、どうして受付やりたいなんて言い出したの?」
そう言うと、桐ヶ谷くんは携帯をいじっていた手を止めた。
あれ、もしかして聞いちゃいけないことだったかな。
「受付が一番楽だろ」
そんなことないよ。
受付だって大変なんだよ。
お客さん呼びこまなきゃいけないし。
あ、でも桐ヶ谷くんが受付にいたらお客さんあっという間に集まって来そうだな。
「受付って目立つんだよ。一番目立つような仕事、目立つの嫌いな桐ヶ谷くんがやりたいなんておかしいよ」
常に顔が見える受付なら、桐ヶ谷くんの顔を見た女性のお客さんはきっとあっという間にそこに群がる。
桐ヶ谷くんって、そういうの嫌いなんじゃないの?
「別に。ただ幽霊の役やりたくなかっただけ」
「そ、そっか」
ちょっと期待していた。
もしかしたら、成瀬くんの言う通り私がいるから受付やりたいって言ったのかなって。
そんなわけないのに。
「それより良いの?サボりじゃねぇんならさっさと戻らないとまずいんじゃね?」
「え、あ、そう、だね」
もう少し、桐ヶ谷くんと一緒にいたかった。
でも仕方ないよね。成瀬くんに変わってもらったのも、昼までに戻るっていうのが条件だし。
ガチャ
……あれ?

