文化祭が始まっても、やっぱり桐ヶ谷くんは来なかった。
さっきよりかはやる気になったけど、女子たちはどこか元気がない。
もしかしたら、あの空き教室にいるのかな。
「光凛ちゃん、行って来なよ。叶斗、あそこにいるってさ」
「え?」
制服姿の成瀬くんがいつの間にか前に立っていた。
お客さんはまだ来てないから、中にいるお化け役の人達も暇しているんだろうな。
「あそこって?」
「詳しい場所は分からないけど、いつもの場所にいるってさっき連絡来たよ。光凛ちゃんなら、どこか分かるんじゃない?」
いつもの、場所……。
私の勘が正しければ、桐ヶ谷くんはきっとあの場所にいる。
でも、私が行って良いの?愛依を裏切ることにならないかな。
「あいつ、後夜祭出ようか悩んでいるんだって。このままで良いの?愛依ちゃんに取られても良いの?」
「……嫌、だ」
もしこのまま二人が付き合ったらって思うと、苦しくて仕方がない。
もう何もしないままは嫌だ。
ちゃんと行動してから悩みたい。
何もせずにうじうじ悩むだけは嫌。
「じゃあ行っておいで。俺がその間受付変わっといてあげるから。俺の当番、午後からだしね。それまでなら大丈夫だよ」
「ありがとう」
ごめんね、愛依。
せめて後夜祭までは私のしたいことをさせて欲しい。
桐ヶ谷くんに会いたい。
桐ヶ谷くんと話したい。
桐ヶ谷くんともっともっと一緒にいたい。

