恐怖と戦いながら、桐ヶ谷くんのバイクに跨った。


途中落ち掛けそうになる度に叫んだから、喉が痛い。何だか無駄に叫んじゃったよ。




「お前、うるせぇよ。運転手である俺のこと信じろ」



運転手って、バイクだし。




「怖いの。バイクとか周りがしっかり守られてない乗り物は」




百%安全な乗り物じゃないと、不安で嫌なの。






「俺が守ってんだろ」



「え?」




桐ヶ谷くんが何か言ったけど、聞き取れなかった。
顔が赤いのは気のせい?





「何でもねぇよ。ほら、行くぞ」




そして、結局何も言わず桐ヶ谷くんは歩き出した。
一体、何?





え、っていうか、ここどこ!?なんか海が見えるけど、こんな所まで来ていた?
叫んでばかりだったから、周りなんて見ていなかったし、そんな余裕もなかった。



「ここ、どこ?」




歩きにくい砂浜を必死に歩きながら、颯爽と歩く桐ヶ谷くんに聞いた。





何度も来たことあるのかな、この場所。





「俺の唯一安らげる場所」




桐ヶ谷くんは、遠くを見つめながらそう答えた。




唯一って、他にないの?成瀬くんといる時は、凄く楽しそうに見えるけど。



違う、のかな。