「学校一のイケメンくんが、こんなに苦労するなんてねぇ」




綾瀬とすれ違うように、光大が教室に入って来た。




……今は光大がいて、良かったかもしれない。




普段はウザいとしか思わないけど、今は光大の明るさが俺の心を救ってくれた気がした。




「なんなら、俺が協力してやろうか?」




「余計なことすんな」





確かに光大に協力してもらった方が楽かもしれない。少なくとも、俺より女心は分かっているし、何しろ経験豊富だから。




でも、俺の力で何とかしたい。誰の力も借りず、俺の力で綾瀬を振り向かせたい。





「へぇ、結構本気なんだ」





感心したように言う光大を睨んで、俺は残りのオムライスを食った。





さっきはあんなに美味かったのに、今は別のものになってしまったかのように不味く感じた。





味覚って、気持ち次第で変わるんだよな。





つーか、この弁当箱あいつに返さなきゃだよな?