突然立ち上がって、嬉しそうに迫ってきた桐ヶ谷くんに、思わず体が引く。











桐ヶ谷くん、オムライス好きなの?






「昔よく食っていたんだよな。母さんが必死に作っているの見て、俺のために一生懸命になってくれているって思うと嬉しくて」








まるで子どもみたいにはしゃぐ桐ヶ谷くんが、可愛く思えて来た。







怖い表情だけじゃないんだ。
こんな風に子どもみたいに笑ったり、恥ずかしそうにそっぽ向いたり。
意外と色んな表情を持っているんだな。







「ま、まぁどうせお前のつくったもんなんか不味いんだろうけどな」







恥ずかしくなったのか、顔を赤くしながら誤魔化すように桐ヶ谷くんは言った。







ほんと、同じ人とは思えないなぁ。
昨日初めてここで会った時の桐ヶ谷くんはあんなに怖いと思ったのに、今は可愛いんだもん。






まぁ、今でも怖い時はあるけど。






「ここ、座って良いよ」







「は?」







流石に私だけ机で食べるのは気が引ける。








それに、私が作ったものを床で食べて欲しくない。(変な意味はなしにね?)







「お前、なんか気持ち悪い」






くっ!




こ、この人、こっちが少し油断したらすぐこうやって憎まれ口叩くんだから!






やっぱり、譲ってなんかやらない!





床でも芝生の上でもどこでも食べていれば良いでしょ!






「じゃあもう良い」






桐ヶ谷くんを座らせようとしていた椅子に、私が勢いよく座った。







こんな人に優しくしようと思ったのが、大間違いなんだ。







「あー、悪かったって。これ、美味いな」







謝れば良いって話じゃないよ。








もうお弁当作るのだって、今日だけなんだからね。








今後、こいつがこの教室にいたら追い出してやるんだから。