「前にもこんなことがあってさ、その時は俺の好きな女の子をバカにされた時だった。俺はそういう時にしか怒らないってこと。この意味分かる?」
「えっと……」
それって、つまり……。
って、えぇ!?
ま、まさか成瀬くんが私のことを好きってこと!?
いやいや、ありえないよ!
だけど、今の成瀬くんの話からするとそれ以外考えられないというか、その方が辻褄合っているよね。
でも、まさか、そんな……。
「分かった?俺は光凛ちゃんのことが好きだってこと」
ドキッ
告白されて、ときめかない方がおかしい。
だけど、私には……。
「叶斗なんて俺が忘れさせる。絶対振り向かせてみせる」
抱き締められて言われた言葉は、恋愛経験がない私にとっては毒薬みたいなもので。
他に好きな人がいるのに、抱き締め返しそうになった。
ダメ。こんな不安定な気持ちで、成瀬くんの気持ちに応えようとしちゃダメ。
「何やってんだよ」
「!?」
聞こえて来た声に思わず体が反応して、条件反射で成瀬くんから離れた。
その声の主は、予想通り桐ヶ谷くんだった。

