「ふふっ、胡桃は先に帰るね」
「ちょ、胡桃……!」
そのいつもと違う様子に胡桃も気づいたはずなのに、この空気になる発言をした張本人は荷物を持ってさっさと教室から出て行ってしまった。
「………」
「………」
当然、残された私たちの間にはなんだか変な空気が流れたまま。
き、気まずい……。
もう一度颯太の方を見てみるけれど、視線が交わることはない。
「か、帰る……?」
沈黙すら気まずくて出た私のそんな言葉に、颯太は「ん」と小さく返事をした。
なんとなく会話もない中、無言で学校を出た私たちはそのまま帰路を歩く。
「さ、さっきの、気にしなくていいから」
少し前を歩く颯太の背中に思い切ってそう声をかけると、その足がピタリと止まった。



