ロスト・ラブ



でも、まぁ。


『胡桃が言ってあげようか?“茜ちゃんにもっと触って”、って』


……胡桃の最初の提案よりはまだいくらかマシだと信じたい。


「……悪い篠原、もう一回言ってくれる?」

「だーかーらー。茜ちゃんにもっと触っ……」
「あーっ!ちょっとちょっと胡桃さん?」


そう思っていた矢先、胡桃がそのフレーズを口にしようとしたものだから、私は慌てて彼女の口を塞いだ。


あ、危ない危ない……。というか、もしかしてアウト?


颯太にそんなにストレートに言うなんて、恥ずかしすぎる。


それに颯太だって絶対に困って……。

「……颯太?」


チラッと颯太へと顔を向けると、颯太は手で口元を隠して視線を外していた。


……けれど、ちらりと見えた耳はなぜだか真っ赤で。