私自身、颯太の存在に頼っている自覚はあった。
……けど、そんなすがるように手を伸ばしただなんて。
「茜」
思わず俯いた私の頭上から、もう一度颯太の声が私の名前を呼んだ。
ゆっくり視線をあげていくと、颯太の顔を見るより先に視界に入ったのは……こちらへと伸ばされた颯太の手。
「え……?」
「……茜がいいなら、ずっと握ってる。怖くないように」
真っすぐと私の目を見て言ってくれた颯太は、たぶん、すごく緊張して覚悟した上で言ってくれている。
私が颯太に触れて拒絶してしまうのを怖がっているように、颯太もたぶん、不安に思ってる。
颯太は、私がこうなったのを自分のせいだと思っているだろうから。
2人できちんと話したときから、何度も「違う」と言ってはいた。
けど、私が言ったところで、たぶん颯太の心の中には私と同じようにあの日のことが消えずにいるんだと思う。



