「茜も少しずつ前に進んでるのね」


小さくつぶやかれたお母さんのその言葉に、今までのことへの感謝の気持ちでいっぱいになる。


「楽しんでくるね、お母さん」

「えぇ、行ってらっしゃい」


お母さんに思いっきり笑顔を向けて、私は玄関を出た。


「わっ、びっくりしたー」

が、ドアを開けた目の前に颯太が立っていて、心臓が飛び跳ねる。


驚いたのは颯太も同じようで、目を丸くしたあとでため息をつかれた。


「お前なぁ。俺が行くまで家の中で待っ……」

「颯太?」


けれど、話の途中で颯太の言葉が不自然に止まる。


「……いや、なんでもない。次からは俺が行くまで外出んなよ」


かと思えばそう諭されて、颯太は「行くぞ」とさっそく歩き出した。