「へぇ。今年もやるんだね」
「須藤くん、行ったことあるの?」
「小学校の時に何回かね。ここらじゃ一番大きな花火大会だから、毎年大勢の人でにぎわってるよ」
「えぇ~、楽しそう!」
須藤くんの話に興味津々な様子の胡桃。
「じゃあ……」
じゃあ、今年は私と一緒に行こうよ。
あまりにも胡桃が行きたそうにするから、思わずそう言いかけた。
けど、その途中で思いとどまる。
「ねぇ茜ちゃんっ、一緒に……。……あ、やっぱりいいや。また来年行こうよ」
私を誘おうとしてくれた胡桃も、言葉を途中で飲み込んだ。
……あぁ、だめだなぁ。
私だって行きたいのに、簡単に行こうと言うことができない。
大勢の人。暗い夜の時間帯。
そんな時間に出歩く勇気なんてないし、きっとお母さんにも心配をかける。



