颯太が、守ってくれてた……?
ありえない。ありえないよ、そんなこと。
だって……。
「……本当に?本当に茜ちゃん、そう思う?」
「………」
胡桃の問いに言葉を飲み込む。
男子に囲まれて倒れたときも、熱を出したときも、確かに颯太は私を助けてくれた。
嫌いなはずなのに。煩わしい幼馴染のはずなのに。
『無茶だけはすんなよ』
──知ってた、そんなこと。
颯太が優しいことは、ずっとずっと昔から。
『俺はお前を怖がらせる』
何度も蘇るあのときの颯太の言葉、表情。
もし。もし本当に、颯太が私の恐怖症のことを知っていたんだとしたら。
あの日以来、不自然に被ってた登下校がぱったりと途絶えた理由がそういうことなんだとしたら。
「……っ、なんで」
込み上げてくる感情を必死で押し殺す。
ない。そんなことってないよ。
もしも、の話が次々と浮かんできて、そしてそれがひとつひとつハマっていく。
けれど、それらを全部真実と捉えるには大きすぎて。



