「ねぇ茜ちゃん。やっぱり柳くんとなんかあったんじゃない?」


嬉しそうな表情で胡桃はそう聞いてくるけど、私には思い当たることなんて何一つなかった。


……あるとすれば。



『私……、颯太に、触れたい』


思い出しただけでぶわっと顔が熱くなる。

あるとすれば、あの変な夢を見たくらいだ。
夢の中で、私は変なことを颯太に言ってしまった。


誰にも言ったことがない、私の心の中でだけ考えていた願い事。


「茜ちゃん?顔赤いけど……まさか」

「えっ、あ、違うの!これはちょっと変なこと思い出したというか」

「変なこと?」


焦って口にしてしまった言葉に、しまったと咄嗟に口を押える。

けどそれはもう時すでに遅しで、胡桃はにこりと意味深に笑った。


「胡桃はただ、茜ちゃんの熱がまた上がったんじゃないかって心配しただけなんだけどなぁ~」

「えっ」

「そっかぁ。"変なこと"があったんだね」