熱のせいだ。熱のせい。


自分が熱を出してるだなんていまだに自覚がないのに、こういうときだけは適当な理由にすがりたくなる。


だって、だって。


颯太が、あんまりにも私を心配してくれてるのがわかるから。

颯太なりの優しさに気づいてしまったから、それがたまらなく嬉しく仕方ないんだ。


「茜?熱上がった?」


茜、あかね、って。

颯太がこんなに何回も名前を呼んでくれることなんていつぶりだろう。


「……ううん。大丈夫。ちゃんと帰れるよ」


放課後になってからずっとふわふわしていたのは、この気持ちのせいか、熱のせいかはわからないけど。

でも。


「ありがとう、颯太」


たとえ嘘でも、私はこの幼馴染を、もう『大嫌い』とは言えないかもしれない。

そう、思った。