ロスト・ラブ



「え、と。助かった、のかな」


それがあまりにもあっという間過ぎて、私と胡桃はなんだか取り残されたような感じになってしまった。


「よかったね、くる……」

「もう!茜ちゃんのバカ!」

ドン、と。

衝撃と共に胡桃に抱き着かれたのはその一瞬。


「胡桃?」

「胡桃は大丈夫だから。だからお願い、もう胡桃を守ろうとしないで……」


ギュウーッとしがみつかれたその力は胡桃の気持ちのようで。


抱きしめ返そうと伸ばした自分の手が震えていたことに、私はいま気が付いた。


ただ胡桃を守りたくて男子たちの前に出ただけなのに、情けない。


頭は冷静なつもりでも、こうも体に反応してしまっては、胡桃に心配されて当然だ。