「遅い」

「っ!」


朝。

家の玄関の扉を開けると、不機嫌な顔を浮かべた颯太がそこにはいた。


「なんでまた、」

「行くぞ」

「ち、ちょっとっ」


なんでまたいるの。

そう言おうとした私の言葉は、最後まで言われることなく途切れた。


私の姿を確認するなり、颯太はスタスタと歩いて行ってしまう。



……ここ最近、ずっとこんな感じが続いていた。


あの日以来、颯太は登下校共に、私を待つようになった。

何か会話があるわけではない。けど、文句もない。


いつも登下校の時間は不思議と被っていたから、一緒にいることに対してはいつもと変わらないといえば変わらないんだけど。

でもその時は、私と居合わせたことに何かしら文句を言っていたのに。