「俺、太田弘樹って言います。今日から宜しくね!」

バイト初出勤日、真っ先に声をかけてくれたのが、1つ年上の先輩の太田くんだった。バイト歴2年目で、新しく来たバイトの子の育成担当をしてるらしい。

「山本南って言います。宜しくお願いします。」

人見知りが祟って、どうも杓子定規な挨拶になってしまう。

「山本さんかぁ…同じ苗字の人がいるから、南ちゃんって呼んで良い?てゆうか呼ばせて!」


同じ苗字の人がいるから下の名前で呼ぶ、ってゆうのは一般的にはよくある話で、特別な感情なんてそこには無かったのかもひれないけど、“南ちゃん”って呼ばれる度に、心地よいと感じるようになっていた。



「南ちゃん今日何時あがり?」

「今日は22時あがりです!」

「俺も22時あがり!めちゃくちゃお腹空いちゃってさぁ〜バイトあがったらファミレスでなんか食ってかない?」

「良いですよ〜」

二人の距離が縮まって来た頃、太田くんにご飯に誘われた。

バイトの時間が終わって、更衣室で着替えていた時、外から太田くんと店長の話声が微かに聞こえた。

「店ん中でごたごたおこすなよ!」
って店長が言ったような気がした。