恋の宝石ずっと輝かせて2

「今度こそ帰るとしよう。ユキにクッキーうまかったと伝えておいてくれ、といっても今のお前じゃ無理そうだな」

「なあ、キイト、どうして俺はカジビ探しの手伝いを頼まれたんだと思う?」

「まだそんなことを言ってるのか。それはまさに猫の手も駆りたくて、黒猫のトイラなら協力してくれると思ったんじゃないのか?」

「だったら、それは誰なんだ? もしかしてニシナ様なのか?」

 キイトは眉根をしかめて考え込んだ。

「可能性はないこともないな。だがニシナ様がカジビを探したいのなら、この失踪騒ぎの辻褄が合わないではないか。セキ爺はカジビがニシナ様をさらったと思っている」

「ニシナ様がカジビを探せと言ったことで自分の居場所がわかると言いたいのだろうか」

 トイラも不思議がった。

「それなら、何もそんな回りくどいことをせずに、どこにいるかくらいすぐ伝えられるだろう」

「俺も言いたいところはそこなんだ。だからこれには何か裏があると思えてならない。なぜこの俺がこの山の問題に組み込まれるのか、何か必ず意図がある」

「それがあるから、ユキの体から出してもらって人間になる事に抵抗があるのか?」

「まあ、それもあるけど、理由はそれだけじゃない。俺が人間になるなんてそう容易いことじゃないぜ。俺は自分のことだけを一番に考えられないだけだ」

 キイトはトイラが何を言いたいのか気がついたが、それに触れずに玄関へと歩き出した。

「それじゃまたな。ユキには手紙を残すなり、ちゃんと説明しておくんだな」

「ちぇっ、面倒くさいな」

「それと、仲直りも忘れるな」

 キイトはさっさと去っていく。

 返事をする代わりにトイラは思いっきりため息を吐いていた。