恋の宝石ずっと輝かせて2


 春は竹の子や山菜が豊富に採れ、夏は滝つぼや川で魚を獲り、秋はキノコや木の実が沢山採れ、冬の食料が少ないときは山に祭られた祠に人間達が捧げるお供え物で食べることにはあまり困らないこの山は、ニシナ様が秩序を守ってるからだと言われている。

 自然が豊富で人間からも崇められ、平和を絵に描いた場所だといっていい。

 人の姿にもなれる、神の使いとしての動物達は山を守るために力を授けられ、そして山神のために働く。

 カジビとキイトも神の使いとしてこの山で生まれた。

 カジビはイタチ、キイトは狐だが、生まれた時期が近かったため、子供の頃はいつも一緒に遊び、二人は兄妹のように育った。

 だが、カジビは尻尾が二つに分かれており、異例を毛嫌うものには不吉とされたり、心無い者からいつもからかわれていた。

 キイトはその度にカジビを守ろうとするが、体が弱いせいもあり、しっかりと守りきれない自分に歯がゆい思いを抱く。

「カジビは頭がいいし、誰にも真似できない力を沢山持っている。その力は尻尾が二つあるからだと私は思う。だからカジビは選ばれし存在なんだよ」

「キイト、慰めはいらぬ。尻尾が二つに分かれていても気になどせぬ。俺はいつかもっと力をつけて皆を見返してやるつもりさ」

「それって赤石を手に入れて、山神さまになるってこと?」

「まさか、それは言い過ぎ。赤石は山神さまだけのものだ。そんなもの手にいれたところで何の役にも立ちやしない。俺は誰もが俺を頼ろうとしてくれるような、認められる存在を目指してるんだ。俺は鏡を使って邪悪なものや不安な感情を閉じ込めたりできる。もしかしたら修行によっては病も閉じ込められるかもしれない。そうすれば医者と同じだ。そうなったらキイトも健康にしてやれるし、皆から有難い存在にもなれる。例えこんな尻尾を持っててもな」

「すごい。そうだよね、カジビならきっとそうなれる」

 カジビは恥ずかしそうに笑いながらも、目は希望に満ちて輝いていた。

 キイトもカジビの目を誇らしげに見つめ、二人はこの先の未来が明るいものと信じて止まなかった。