「仁、悪いけど、この石どっか片付けてきて。こんなところに置いてたら不自然で、誰かが蹴躓くかもしれない」
「ああ、わかった」
仁は石を持ち上げようとしたが、意外に重くてよろめいた。
かっこ悪いところを見せられないと、かろうじて力を込めて持ち上げ、よたよたと邪魔にならないところへとのっそりと運んでいった。
「さてと、ユキ。さっきの様子だと、トイラと意見が合わなかったみたいだね。トイラも何を意固地になってんのやら。あんた達まずは早く仲直りしないと。折角会えたんだろ。もっとそのときを大切にしないと」
キイトは半ば呆れた目を向けていた。
「ねぇ、キイトは誰かを本気で好きになったことがある?」
「えっ、急になんだよ」
「キイトなら、私の立場になったらどう感じるか聞いてみたいの」
「あんたの立場にねぇ、そうだな。そりゃ好きな人とは一緒にいたいけど、でも好きな人がこうして欲しいって言ったら言うことを聞いてるかもしれない」
ユキはてっきり賛同してくれると思ってたので、否定されて少し眉根を顰めた。
「だって、その好きな人も相手のために必死になってるんだろ。命を張ってくれたのなら私は無駄にはできない。その人の望みを叶えてあげたいって思う。それが例え辛くても、心を鬼にして、私はその人をまず第一に尊重する」
キイトの真剣な眼差しがユキの心臓を鷲づかみにした。
次第にキイトの瞳は遠くを見つめるように何かを回顧していた。
仁が戻ってきたことで、キイトは我に返り、取り繕うようににこっとユキに微笑んだが、ユキは笑えず視線をそらしてしまった。
油蝉の鳴く声が急に耳についてしまい、心がざわざわとしてユキは落ち着きを無くした。
「ああ、わかった」
仁は石を持ち上げようとしたが、意外に重くてよろめいた。
かっこ悪いところを見せられないと、かろうじて力を込めて持ち上げ、よたよたと邪魔にならないところへとのっそりと運んでいった。
「さてと、ユキ。さっきの様子だと、トイラと意見が合わなかったみたいだね。トイラも何を意固地になってんのやら。あんた達まずは早く仲直りしないと。折角会えたんだろ。もっとそのときを大切にしないと」
キイトは半ば呆れた目を向けていた。
「ねぇ、キイトは誰かを本気で好きになったことがある?」
「えっ、急になんだよ」
「キイトなら、私の立場になったらどう感じるか聞いてみたいの」
「あんたの立場にねぇ、そうだな。そりゃ好きな人とは一緒にいたいけど、でも好きな人がこうして欲しいって言ったら言うことを聞いてるかもしれない」
ユキはてっきり賛同してくれると思ってたので、否定されて少し眉根を顰めた。
「だって、その好きな人も相手のために必死になってるんだろ。命を張ってくれたのなら私は無駄にはできない。その人の望みを叶えてあげたいって思う。それが例え辛くても、心を鬼にして、私はその人をまず第一に尊重する」
キイトの真剣な眼差しがユキの心臓を鷲づかみにした。
次第にキイトの瞳は遠くを見つめるように何かを回顧していた。
仁が戻ってきたことで、キイトは我に返り、取り繕うようににこっとユキに微笑んだが、ユキは笑えず視線をそらしてしまった。
油蝉の鳴く声が急に耳についてしまい、心がざわざわとしてユキは落ち着きを無くした。



