恋の宝石ずっと輝かせて2

「恐れてる? 一体何を?」

「だから、自分が自然界のルールを変えてしまうことさ。本来ならトイラは森の守り主になって、人の部分は消えていたから、それが残ってさらに人間になってしまうと、何かが狂うんじゃないかって心配してるだけさ」

「そんな……でも、ほんとにそれだけが理由なの? ねぇ、トイラ本当のこと話して。今すぐ出てきて、私に話せなかったら仁に本当のこと話してよ」

 ユキは自分の中にいるトイラに呼びかけてみた。

 だが、いつまでもトイラの意識は出てこなかった。

「あ、あの、取り込み中すまんが、何か不都合なことでもあったかのう?」

 セキ爺が不安げな表情で恐々と声を掛けてきた。

「いえ、なんでもないんです。セキ爺、トイラに会わせて下さってありがとうございました」

 ユキは急いで涙を拭きながら、セキ爺に頭を下げた。

「いや、それは別にどうってことないが、遠くから見てたら、なんかいがみ合ってたようじゃったから、何かあったのかと思ってのう。込み入った話中だったなら、もう一度トイラを映し出してあげようか」

 ユキは一瞬躊躇った。

 トイラが人間になれると知っているのに、嘘をつかれた状態ではどうしても冷静に話し合うことができないのを感じていた。

 仁もユキの逡巡する様子をみて、どうしたらいいのかわからない。

「セキ爺も、傷がまだ治ってないしあまり無理をしない方がいい。また今度でいいんじゃない? その道具を使えばある程度の体力も消耗してしまうでしょ」

 キイトが傍から声をかけ、それがユキをハッとさせた。

「あの、お言葉は嬉しいですが、これで充分です。またこの次お願いします」

 ユキもこの時は少し冷静になる時間が必要だった。

「遠慮しなくていいんじゃぞ。わしはまだこれぐらいでへこたれんって」

「セキ爺、いいからいいから。それにいつまでも結界張っておくわけにもいかないでしょ。ここ誰も入ってこれないよ」

 キイトが指摘する。

「ああ、そうじゃった」

 セキ爺はゆっくりと鳥居に向かっていった。