恋の宝石ずっと輝かせて2

「それは私が理解して大目に見てるからに決まってるでしょ。でも大概にしないと、この私でも最後は愛想つきちゃうよ」

「マリはいいな。いつもはっきりしてて」

「そう思うんだったら、ユキもそうすればいいだけじゃない」

 マリの言葉はユキの心をびくっとさせた。

 簡単な事のように思えて、でもそうできないどこか恐れる気持ち。

 顔に暗く陰りが出ると、マリはユキの背中をひっぱたいた。

「ほらほら、また思い悩んできてるぞ。とにかくさ折角夏休み始まったんだから、今からぱーっとどっか遊びに行こうか」

 明るいマリの笑顔に吸い込まれそうになって思わず「うん」と首を縦に振りそうになったが、ふと声を掛けられた下級生のことを思い出した。

「あっ、そうだ。私、この後、約束があったんだ。ごめん。また電話する」

 がたっと机を震わせて席を立ち、腕時計をチラリと見ながらユキは焦って鞄を掴むや否や、教室の出口めがけて走り出した。

「ちょっと、いきなり慌ててどうしたのよ」

 マリが呼び止める。

「ごめん。とにかくまた今度ね」

 ユキは慌てて去っていく。

 マリは仕方がないと、邪険にされても怒る気にはなれなかった。

 ユキが去った後、マリも身支度をして帰ろうとしたその時、まだ教室に残っていた生徒が突然悲鳴を上げた。

 何が起こったのかその騒ぎがある方向を見れば、開いている窓枠に大きなカラスが一羽止まっていた。

 真っ黒な体と対照的に艶やかな緑色が嘴からぶら下がっている。

 カラスは中を見渡してから羽を広げて教室へ入り込んできた。

 誰もが度肝を抜かれてその光景を見ている中、カラスは机の上に降り立って、嘴にぶら下がっていた緑色のものをそこに置いた。

 そして用が済んだと言わんばかりにまた外へと飛んで行った。

「あれは一体なんだったんだ?」

 次々に言葉が飛び交う。

 マリは物怖じせず、カラスが置いていったものを見にその机へと近寄り、それをつまみ上げた。

「葉っぱ? なんでこんなものカラスがここに置いていくのよ」

 そこはユキの机だった。

 マリはその葉っぱを手にしてじろじろと眺めていた。