「それは私が理解して大目に見てるからに決まってるでしょ。でも大概にしないと、この私でも最後は愛想つきちゃうよ」
「マリはいいな。いつもはっきりしてて」
「そう思うんだったら、ユキもそうすればいいだけじゃない」
マリの言葉はユキの心をびくっとさせた。
簡単な事のように思えて、でもそうできないどこか恐れる気持ち。
顔に暗く陰りが出ると、マリはユキの背中をひっぱたいた。
「ほらほら、また思い悩んできてるぞ。とにかくさ折角夏休み始まったんだから、今からぱーっとどっか遊びに行こうか」
明るいマリの笑顔に吸い込まれそうになって思わず「うん」と首を縦に振りそうになったが、ふと声を掛けられた下級生のことを思い出した。
「あっ、そうだ。私、この後、約束があったんだ。ごめん。また電話する」
がたっと机を震わせて席を立ち、腕時計をチラリと見ながらユキは焦って鞄を掴むや否や、教室の出口めがけて走り出した。
「ちょっと、いきなり慌ててどうしたのよ」
マリが呼び止める。
「ごめん。とにかくまた今度ね」
ユキは慌てて去っていく。
マリは仕方がないと、邪険にされても怒る気にはなれなかった。
ユキが去った後、マリも身支度をして帰ろうとしたその時、まだ教室に残っていた生徒が突然悲鳴を上げた。
何が起こったのかその騒ぎがある方向を見れば、開いている窓枠に大きなカラスが一羽止まっていた。
真っ黒な体と対照的に艶やかな緑色が嘴からぶら下がっている。
カラスは中を見渡してから羽を広げて教室へ入り込んできた。
誰もが度肝を抜かれてその光景を見ている中、カラスは机の上に降り立って、嘴にぶら下がっていた緑色のものをそこに置いた。
そして用が済んだと言わんばかりにまた外へと飛んで行った。
「あれは一体なんだったんだ?」
次々に言葉が飛び交う。
マリは物怖じせず、カラスが置いていったものを見にその机へと近寄り、それをつまみ上げた。
「葉っぱ? なんでこんなものカラスがここに置いていくのよ」
そこはユキの机だった。
マリはその葉っぱを手にしてじろじろと眺めていた。
「マリはいいな。いつもはっきりしてて」
「そう思うんだったら、ユキもそうすればいいだけじゃない」
マリの言葉はユキの心をびくっとさせた。
簡単な事のように思えて、でもそうできないどこか恐れる気持ち。
顔に暗く陰りが出ると、マリはユキの背中をひっぱたいた。
「ほらほら、また思い悩んできてるぞ。とにかくさ折角夏休み始まったんだから、今からぱーっとどっか遊びに行こうか」
明るいマリの笑顔に吸い込まれそうになって思わず「うん」と首を縦に振りそうになったが、ふと声を掛けられた下級生のことを思い出した。
「あっ、そうだ。私、この後、約束があったんだ。ごめん。また電話する」
がたっと机を震わせて席を立ち、腕時計をチラリと見ながらユキは焦って鞄を掴むや否や、教室の出口めがけて走り出した。
「ちょっと、いきなり慌ててどうしたのよ」
マリが呼び止める。
「ごめん。とにかくまた今度ね」
ユキは慌てて去っていく。
マリは仕方がないと、邪険にされても怒る気にはなれなかった。
ユキが去った後、マリも身支度をして帰ろうとしたその時、まだ教室に残っていた生徒が突然悲鳴を上げた。
何が起こったのかその騒ぎがある方向を見れば、開いている窓枠に大きなカラスが一羽止まっていた。
真っ黒な体と対照的に艶やかな緑色が嘴からぶら下がっている。
カラスは中を見渡してから羽を広げて教室へ入り込んできた。
誰もが度肝を抜かれてその光景を見ている中、カラスは机の上に降り立って、嘴にぶら下がっていた緑色のものをそこに置いた。
そして用が済んだと言わんばかりにまた外へと飛んで行った。
「あれは一体なんだったんだ?」
次々に言葉が飛び交う。
マリは物怖じせず、カラスが置いていったものを見にその机へと近寄り、それをつまみ上げた。
「葉っぱ? なんでこんなものカラスがここに置いていくのよ」
そこはユキの机だった。
マリはその葉っぱを手にしてじろじろと眺めていた。



