恋の宝石ずっと輝かせて2

 手伝いが済み、良子の動物病院から開放されると、仁はユキの家へ向かった。

 途中神社に立ち寄り、キイトを探したが会うことはできなかった。

 仁はキイトにキスをされた額に手を当てて、暫く蝉の鳴き声を聞いて佇んでいた。

 自分に何ができるのか考えたとき、仁は覚悟を決めた。

 その気持ちのままユキの元へと向かった。

 ユキの家に近づけば、ふんわりと甘い匂いが漂っている。

 家に上がれば、暑い中、汗を欠きながらオーブンを使ってクッキーを焼いているユキがいた。

 そのエプロン姿が可愛い。

「仁、ちょうどよかった。ちょっと味見して」

 焼いて間もないふにゃっとしたクッキーを手渡され、仁は口に頬張る。

 その様子を不安げに見詰めながら、ユキは仁の言葉を息を飲んで待っていた。

「うん、おいしいよ」

 聞きたかった言葉が聞けて嬉しかったのか、ユキはほっと一息つく。

「よかった。これならキイトも食べてくれるね。今日はキイト、神社にいないのかな」

「さっき見てきたけど、居なかった」

「そっか。すぐに腐るもんじゃないからいいけど、焼きたて食べてもらいたかったな」

 ユキはキッチンに戻り、使った道具の片づけをし始めた。

「なあ、ユキ、ちょっとトイラと話できないかな」

「うん、いいけど、ちゃんと何を話したか、後で必ず教えてよ」

「分かってるよ」

 そういうや否や、ユキはダイニングテーブルに向かって座りだした。

「で、俺に何の用だよ」

「おお、もうトイラなのか。出てくるのが早いな」

 仁もまたダイニングテーブルを挟んだ正面に腰を落ち着けた。