恋の宝石ずっと輝かせて2

 仁は楓太をチラリとみてから、ドッグフードを準備すると、それを持って檻の柵をはさんで対峙した。

「おい、楓太、くれぐれも噛まないでくれよ」

「安心しな、お前さんのことは噛まないから」

「お前喋れるのか?」

「お前さんは、拙者が話してもあまり驚かないみたいだな」

 犬が喋っても慣れきってしまい、落ち着いて檻のドアを開け、仁は餌を楓太の前に差し出した。

 楓太はゆっくりと立ち上がり、匂いを嗅いでから食べ出した。

「もしかして、人の姿になれるとか」

 仁は楓太の食べている様子をじっと眺めながら質問する。

 楓太は顔を上げて、口の周りを舌で嘗め回してからまた喋った。

「拙者は話せる力をニシナ様に与えられただけだ」

「お前、ニシナ様のことを知ってるのか?」

「なんだ、お前もニシナ様のことを知ってるのか? お前は動物の姿に変われるのか?」

「いや、僕は普通の人間だ」

「ふーん。だけどなぜお印がついてるんだ」

「お印?」

 楓太が自分の額を前足で何度も触って場所を知らせた。

 仁もそれに合わせて自分の額に触れる。

 そして、キイトがここにキスしたことをおぼろげに思い出した。