恋の宝石ずっと輝かせて2

 その翌日。

 仁は眠い目を擦って大きな欠伸を出しながら、まだ人通りもない道を自転車で駆けていた。

 朝の空気はひんやりとしていて気持ちがいい。

 少しは頭もすっきりするかと、更にスピードを出して冷たい空気の流れを味わっていた。

 動物病院に着くと、白衣を着た良子が眠たそうな顔をして迎えてくれた。

 早速、檻に入っていた動物の世話を命じられ、大きな欠伸を一つしながら、仁は仕事に取り掛かかった。

「元気そうな犬や猫なのに、なんでこんなに居るんだよ」

 仁が水を取り替えながら良子に聞いた。

「ほら、夏休みでしょ。旅行で家を留守するから預けていく人が多いのよ。ここは動物病院だから、もし何かあっても安心でしょ。こっちも稼ぎ時稼ぎ時」

「ふーん」

 仁は檻の中で大人しく寝ている猫を撫ぜていた。

 昔は猫アレルギーで触ることもできなかっただけに、こうやって堂々と猫に触れられることが嬉しい。

 これも太陽の玉に吸い込まれるジークを助けたときに、何らかの力が自分にも作用したお陰だと思っている。

 獣医になりたいと思ったのは、目の前に獣医の良子がいることも影響しているが、一番の動機はトイラやキースのような動物たちにまたどこかで会えるかもしれないと思ったのがきっかけだった。

 動物を見ると、つい人間の言葉を話すのではと期待するようになってしまった。

 猫の世話が終わると、今度は犬の檻の前に立った。

「あれ、こいつ楓太じゃないか。なんでこんなに怪我してるんだ」

 目の前には柴犬が、あちこち包帯を巻かれた姿で寝そべっていた。

「瞳ちゃんが言うには、家を飛び出したかと思うと、派手な喧嘩して帰って来たらしいの。家にいると、まだ怪我も治ってないのに隙を見てすぐ飛び出しちゃうんだって。それで暫く入院させてるの。そういえば瞳ちゃん、仁によろしくっていってたわよ。なんか仁もててるみたいね」

 楓太は八十鳩瞳が飼っている犬だった。