「ただいま」
パタパタと母親が廊下を小走りするスリッパの音が近づいてくる。
「あら、遅かったわね。夏休みだからって遊び惚けてちゃだめよ。受験があるんだから」
「分かってるよ。腹減った。ごはん」
「はいはい」
母親は台所に立ち、出来上がっていた夕飯を温めなおした。
「あっ、そういえば、良子から電話があったわよ。アシスタントが夏休み取るから、仁に手伝って欲しいって」
良子は母親の妹であり、獣医で動物病院を経営している。忙しいときは頼みやすいとあって、仁はよく仕事を手伝わされていた。
「わかった。後で連絡しておく」
「やっぱり仁も獣医目指して受験するつもりなの?」
おかずとご飯をテーブルに置きながら母親が言った。
「うん」
仁は軽く返事してからお箸を手に取り「頂きます」と呟いた。
「なんか仁に動物任せて大丈夫かしら。動物っていっても犬や猫だけじゃないのよ。結構ビビリなところあるのに、ライオンやトラとか診察することになったら怖いわよ」
母親は脅かそうと冗談を言ったつもりだった。
「大丈夫だよ。黒豹と狼を相手にしたことあったから」
「えっ?」
「いや、なんでもない」
仁はご飯を口に入れ咀嚼していた。
「とにかくまずは大学入らないとね。そういえばユキちゃんはどこ目指してるんだろう。やっぱりアメリカいっちゃうのかな。仁と遠く離れちゃうとそのまま疎遠になっちゃいそうで怖いな。義理の娘にするならやっぱりユキちゃんがいいし」
味噌汁をすすっていた仁がむせていた。
「気が早いんだよ」
「だってさ」
「それにユキは僕なんて選ぶわけがないだろ……」
それをいいかけたとき、玄関のドアが開く音が聞こえ仁の父親が帰ってきた。
母親はそっちに気を取られて玄関まで迎えに行った。
仁は無表情でご飯を食べ続ける。虚しさがこみ上げて味などよくわからなかった。
そして食事が終わると、良子に電話を入れた。
早速翌朝に来いと言われるが、文句も言わずに素直にそれを受けるところは、自分でもお人よしだと思わずにはいられなかった。
パタパタと母親が廊下を小走りするスリッパの音が近づいてくる。
「あら、遅かったわね。夏休みだからって遊び惚けてちゃだめよ。受験があるんだから」
「分かってるよ。腹減った。ごはん」
「はいはい」
母親は台所に立ち、出来上がっていた夕飯を温めなおした。
「あっ、そういえば、良子から電話があったわよ。アシスタントが夏休み取るから、仁に手伝って欲しいって」
良子は母親の妹であり、獣医で動物病院を経営している。忙しいときは頼みやすいとあって、仁はよく仕事を手伝わされていた。
「わかった。後で連絡しておく」
「やっぱり仁も獣医目指して受験するつもりなの?」
おかずとご飯をテーブルに置きながら母親が言った。
「うん」
仁は軽く返事してからお箸を手に取り「頂きます」と呟いた。
「なんか仁に動物任せて大丈夫かしら。動物っていっても犬や猫だけじゃないのよ。結構ビビリなところあるのに、ライオンやトラとか診察することになったら怖いわよ」
母親は脅かそうと冗談を言ったつもりだった。
「大丈夫だよ。黒豹と狼を相手にしたことあったから」
「えっ?」
「いや、なんでもない」
仁はご飯を口に入れ咀嚼していた。
「とにかくまずは大学入らないとね。そういえばユキちゃんはどこ目指してるんだろう。やっぱりアメリカいっちゃうのかな。仁と遠く離れちゃうとそのまま疎遠になっちゃいそうで怖いな。義理の娘にするならやっぱりユキちゃんがいいし」
味噌汁をすすっていた仁がむせていた。
「気が早いんだよ」
「だってさ」
「それにユキは僕なんて選ぶわけがないだろ……」
それをいいかけたとき、玄関のドアが開く音が聞こえ仁の父親が帰ってきた。
母親はそっちに気を取られて玄関まで迎えに行った。
仁は無表情でご飯を食べ続ける。虚しさがこみ上げて味などよくわからなかった。
そして食事が終わると、良子に電話を入れた。
早速翌朝に来いと言われるが、文句も言わずに素直にそれを受けるところは、自分でもお人よしだと思わずにはいられなかった。



